鹿児島家庭裁判所 昭和43年(家)629号 審判 1968年9月17日
申立人 佐藤年夫(仮名) 外一名
相手方 佐藤キミ子(仮名)
主文
当事者間において、被相続人佐藤太助の遺産全部につき昭和四五年一〇月三一日までその分割をなすことを禁ずる。
理由
申立人等は、昭和三三年三月二七日死亡した申立人等の被相続人佐藤太助名義の別紙目録記載の不動産につき相手方との間に協議が整わないため、遺産分割の調停申立をなしたので、当裁判所調停委員会は、数回に亘り調停期日を重ねたが、相手方は、「別紙目録記載の土地は、同人がその夫とともに終戦後働いて得た資金で購入し、又同地上の建物も同人等の資金をもつて建てたものであつて、真実の所有権は、相手方にある。本件土地を被相続人名義としたのは、老齢の被相続人を安心させるためにしたもので、被相続人は単なる所有名義人にすぎない。よつて遺産分割には応じ難い。」旨主張して譲らないため合意の成立を見るに至らなかつた。しかして、申立人等は、昭和四三年六月二六日相手方を被告として、鹿児島地方裁判所に対し土地建物共有確認の訴訟を提起したが、その整理はようやく緒についたばかりであり、その解決にはなお相当の日時を要すると思料されるとこる、このように、申立人が遺産に属するとする別紙目録記載の不動産全部につき遺産性が争われる場合には、遺産分割の調停ないし審判による解決は不可能であるから、本件不動産の実質的帰属が確定するまで、遺産の全部につき分割禁止の措置をとることが相当である。しかして、その期間は、訴訟の経過その他諸般の事情を考慮していちおう昭和四五年一〇月三一日までとし、民法第九〇七条三項、家事審判法第九条第一項乙類一〇により主文のとおり審判する。
(家事審判官 橋本享典)